産後の薬膳料理(月子餐)

前回は産後ケアセンター(產後護理之家,月子中心)について書きましたが、そこでは産後ケアセンターに入る人もいれば、そうでない方もいますと申し上げました。

産後ケアセンターにお世話になる以外のパターンを紹介し様々な産後の過ごし方があると書きましたが、そのどれもに共通していることが「薬膳料理(台湾では月子餐と言います。以下月子餐と表記します)を食べること」です。産後ケアセンター入っても、お家へ帰っても、月子餐を宅配してもらうか、家族やお手伝いしてくださる方に作ってもらいます。今回は、この月子餐とはどんなものなのか?を調べてみたいと思います。

今回は大きく分けて

  • 薬膳とは?
  • 月子餐とは?

の項目があります。

薬膳とは?

 月子餐は平たく言うと「産後のお母さん向けの薬膳」になるわけですが、そもそも薬膳とはどういったものなのでしょうか?私自身も聞いたことはあるけれど、なんとなく身体に良さそうだな~くらいなことしか知らず。全民医連のサイトに記載がありましたので、引用させていただきますと

「薬膳の「膳」は食事の意味で、薬膳とは、季節や食べる人の体調に合わせ、食材や生薬(漢方薬の原料)を組み合わせた料理のことです。薬膳には“薬食同源”が基本にあります。薬食同源とは「すべての食べ物に薬効がある」「誤った食事は病を生み、正しい食事で病は自ずと癒える」という考え方です。」(引用①)

ということだそうです。口から入る物は、すべて多かれ少なかれ身体に影響を及ぼすということですね。

「正しい食事で病は自ずと癒える」。そう言われると、みなが産後は絶対に月子餐を食べるのも納得できます。

しかし、誤った食事は病を生む、そういわれると少し怖いものがありますね。後で書きますが、私が月子餐を食べていた時もいろいろと食べない方が良いとされているものがありました。特に冷たい飲み物ですね。私が産後センターの隣のコンビニでアイスラテを買ったら、店員さんに「あなた産後センターから来たんでしょ?こんなの飲んでもいいの?」と聞かれましたし、頼んだデリバリーを受け取ってエレベーターに乗ったら、一緒に乗ってきたお掃除のおばさんに「月子餐が出るでしょ?そんなの食べるの?」と言われました(笑)。現代社会ではもちろん食べない方が良いよと言われますが、食べてはダメだと強制されることはないです。ただいろんな人からは「昔は厳しく言われた!」と聞きますし、特に地方に住んでいて産後は旦那さんの実家にお世話になった子は、現代でもうるさく言われるそうです。産後、そして授乳期間はいろんな人から食事内容についてあれこれ言われますが、根底には「誤った食事は病を生む」という考えがあるからなのかもしれません。

病気の時には治療を助け、そうではない時には病気の予防や滋養強壮を目的とした薬膳を選ぶなど、体調に合わせて使い分けるようにしましょう。(引用①)

今回は産後の話ですが、やはり産後の身体は休憩や薬膳を必要とされるような状態にあります。そして特に、お産の経過、産後の状態は人それぞれです。上記に引用しましたように、薬膳はあくまで治療の補助です。身体や症状に心配事があれば、まず病院に行って主治医に相談しましょう。特に日本の場合は、薬膳を試すより先に受診し、食事に関しては主治医の指示に従って下さい。

月子餐とは

 では、月子餐は産後の身体にどういいのか?について調べていきたいと思います。「すべての食べ物には薬効がある」という考えに基づき、月子餐に関する参考文献は政府発行物のみより引用させていただきます。今回は新北市衛生局から月子餐に関する本(冊子?)が出ているので、そちらを参考にさせていただきました。ネットで閲覧でき、30日間の月子餐レシピも載っているのでぜひご覧になって下さい。(僭越ながら意訳させていただきますが、不備があったらこっそり教えて下さい)(引用➁)

産後の食事の目指すもの

  • 産後の身体を補強し、身体の回復を促す
  • 産後の身体に必要な栄養素及びカロリーの摂取を助ける
  • 母乳の分泌・質の向上を促し、赤ちゃんの健康と発達を助ける

産後の身体に何が起こっているのか?ある文献では

産褥期には、妊娠・分娩からの回復期として、生殖器や全身の状態が非妊時の状態に回復する退行性変化と、乳汁分泌活動が活発になる進行性変化が起こる。(引用③)

とあります。つまり産後のお母さんの身体では、お腹の中で赤ちゃんを育てるために変化した身体を元の状態に戻す変化と、お腹の外に出てきた赤ちゃんを育てるための変化が起こっています。その変化に必要な栄養やカロリーを補う、というのが月子餐の重要な役割になっています。

産後の食事の原則

  1. 栄養バランスの取れたものを基本とし、食材は六つの食品群の中から、いろいろな栄養素が取れるように毎日変化させながら選ぶ。
  2. 個々の赤ちゃんの飲むミルクの量やお母さんの身体の状態を考慮しながら適切なカロリーと栄養素を設定し、産後の肥満と今後に起こりうる慢性疾患を予防する。
  3. 短期間のうちに急速に体重を減らすことはしない。
  4. 多様なたんぱく質を多く含む食材を適量摂取することが望ましい。動物性たんぱく質なら魚、エビ、豚肉、牛肉、鶏肉や卵。植物性たんぱく質なら豆腐や豆干、湯葉など。
  5. 油や脂肪分を摂り過ぎないよう注意する。調理はなるべく煮る、蒸す、焼くなどの方法をとり、焦げ付きにくいような調理器具を選ぶ。揚げたり炒めたりはなるべく避ける。
  6. 一価不飽和脂肪酸を多く含むごま油や苦茶油を選ぶようにする。また、鶏の皮やお肉の脂身の部分は取り除くようにし、飽和脂肪酸の摂取量を減らすようにする。
  7. DHAの豊富に含まれている海産物を食べる。サバや鮭、マグロ、サンマ、イワシ、タラやエビなど。
  8. コレステロールの多量に含まれている食材、内臓類(特に豚)は極力避ける。
  9. 食べ物飲み物は薄味を基本とし、塩分の高い食べ物は避ける。干し肉、ハム、ベーコンなどの加工肉、漬物類、塩分の高い調味料はなるべく減らす。
  10. カルシュウムを十分に摂取するために、カルシュウムを多く含む食材を摂取する。牛乳、ヨーグルト、しらす、乾燥小魚、豆腐、豆干、ゴマなどが良い。
  11. 辛い食べ物は避ける。
  12. 食器や調理器具、飲水機、また食品そのものまで、衛生状態に留意する。
  13. 十分な休息と適度な運動が必要。

この中で何度か出てくる言葉に「お母さんと赤ちゃんの状態を考慮して」というものがあります。産後の状態は各々で少しずつ違ってきます。お医者さんから食事について指示がある場合は、必ずそちらを優先しましょう。

1、栄養バランスと六つの食品群

六つの食品群は日本でも良く見ますね。佐世保市の公式サイトから画像をお借りしました。

(出典:佐世保市食育お役立ち情報

岩手県の公式サイトに妊産婦さん用の詳しいバランスガイドが出ていましたので、画像をお借りしました。食品バランスガイドは、農林水産省が発行しています。

『食事バランスガイド』とは、1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかが一目でわかる食事の目安です。 「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」の5グループの料理や食品を組みあわせてとれるよう、コマにたとえてそれぞれの適量をイラストで示しています。 コマ本体は1日の食事、中心軸は水分、コマはそのエネルギーで回転(運動)します。

(出典:いわて子育てiランド

画像を見ていただければ一目瞭然ですね。県のホームページも、最近はこんなに見やすくなっているんですね。知りませんでした。岩手県のものになりますが、こちらから出産育児に関する制度一覧が見れます。(県によって違いはあると思いますが)参考にされて下さい。

では台湾の方も紹介しておきますね。野菜や果物、などの分類は見ればなんとなく分かると思いますが、時々「これには一体どんな栄養があるんや?」と思うような食品もあるので、いい機会ですのでチェックしたいと思います!笑

(出典:富春國小營養午餐教育網

分類の仕方は日本と同じです。分類ごとの詳しい食品が董氏基金會の食物類別功能與來源に詳しくありました。全部書くとまた長くなるのでw、少しだけ紹介すると、みんな大好き饅頭、蘇打餅乾、蘿蔔糕、小湯圓などは「全榖根莖類」に分類されるようです。へー!豬血糕も全榖根莖類なんですね。

衛生福利部では各項目にどんな食品があるのか、食べ方のポイントなどを項目ごとに動画で紹介していました。気になる方は是非ご覧になって下さい。(衛生福利部:6大類食物)

 

少し長くなってしまいましたので、二部に分けたいと思います。今回はこの辺で。

お粗末様でした!

 

引用・参考文献

  1. 全日本民医連ー薬の話 192 薬膳とは
  2. 新北市政府衛生局ー幸福媽咪健康月子餐SO EASY
  3. 産褥期の疲労に関する看護の効果についての文献検討
  4. いわて子育てiランドー妊産婦の食生活
  5. 佐世保市ー食育お役立ち情報
  6. 富春國小營養午餐教育網
  7. 董氏基金會ー食物類別功能與來源
  8. 衛生福利部ー6大類食物