Cupgaze Cafe/台中

(カフェの情報は一番下です。)

台中の科学館博物館にある図書館へ行った帰り、行ってみたかったカフェに寄ろうと思っていたら、休みであった。グーグルで検索したら、営業中になっていたのだけれど。仕方がないので、違うところで小腹を満たしてから帰ることにした。

科学館入り口沿いの淡溝福徳祠の前を、線香の匂いを感じながら進む。昔習っていたそろばん塾の校舎が古い日本家屋で、玄関の引き戸を引くと、もわっとこんな匂いの空気が全身を包んだことを思い出す。科学館に茂る木々の青さと、激しく鳴く蝉たちの声も相まって、妙に感傷的な気分になった。異郷の地で幼き日のことがふいに蘇ってくるとき、ことさら切なく感じる。まぁ、台湾ではそういう瞬間が割と頻繁にやってくるのだけれど。私はまだ平均寿命の半分も生きていないが、歳を取れば取るほど、こんな気持ちになる時間が長くなっていくのだろうか?

信号を渡り、ファミリーマートとお弁当屋さんの間の道を進む。少し行くと、左手に小さなカフェを見つけた。外はガラス張りになっているが、中が見えにくい。うっすら見えたバーカウンターの奥に人影が見える気がする。入り口にcoffee to go と書かれているボードが置いてある。ということは、営業中なのだろうか?扉を開けて、やっているかどうか聞けばよいのだが、先日も初めて行った朝食屋に入った途端、おかみさんに「うちは1時までだよ!」と言われてしまったところである。確かに、スマホには12:58と表示されていたので、全くその通りなのだけれど。なんとなくまたやってませんよと言われたらどうしようかなと思ってしまう性分なのである。30秒ほど悩んで、扉を開けた(結局開けるんかい)。後で気づいたのだがこのガラス、内側からは丸見えであった。中には店長さんしかいなかったが、もしかしたら、店の外に変なヤツがいるなと思われていたかもしれない。

私はバーカウンターの隣の二人掛けの席に着いた。この席を囲む、重みのある色合いの木材と深緑の壁に反射する照明の揺れ、そしてスピーカーから流れるジャズの音の振動が、雨季の高い湿度に溶けていくようで、ただぼーっと外を眺めたくなるような大変心地の良い空間だった。雨が降っていないのに、まるで雨の日のような雰囲気だなと思った。しばらくしたら、本当に雨になったが。

 

美味しそうなシナモンの香りと共に、アップルパイが運ばれてきた。シナモンがくどくなく、バニラアイスにとても合い美味しかったので、うっかり半分近く食べてしまいのちのちちょっぴり後悔することになった。アイスでも美味しいが、とっておけばよかった!と思うくらい、上からかけてあるシロップ(蜂蜜?)でパイを思いっきりひったひたにし、そこに中のリンゴと上のアイスを添えて食べると、一層美味しくなったのだ。

ラテの入ったグラスをマドラーでかき混ぜると、風鈴のような涼やかな音がした。ラテも大変美味しかったが、このアップルパイには紅茶を合わせたらさらに良かったかもしれない…!!と気がついてしまい、いつか実行しに行かねばと次回に思いを馳せている。

雨が上がったと思い店を出たが、まだ霧吹きで吹きかけているような細かい雨が降っていた。前を横切ったバイクの運転手と一瞬目があった。その背を追いかけるように、早足でバス停へ向かった。

(終)

記事に出てきたお店

Cupgaze Cafe

台中市北區博館一街No13號

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